無料で使える版権切れ楽譜の探し方

やり方カンタ監修: 上野目 泰之3

作曲家の没後70年で楽譜は無料になります。探せる三つのサイト、戦時加算という日本特有の落とし穴、生徒に渡す前の確認手順までやさしくまとめました。

結論:作曲家の没後70年たった曲は、楽譜を無料で集められます

歌う曲を増やすとき、費用をかけずに楽譜をそろえる方法があります。鍵は「版権切れ(はんけんぎれ)」です。作曲家が亡くなって一定の年数がたつと、その曲の楽譜はだれでも自由に使えます。これを知っているだけで、持ち歌の幅がぐっと広がります。

版権切れとは何か

版権切れとは、楽譜の権利が消えて、自由に使える状態のことです。むずかしい言葉では「パブリックドメイン」と言います。

日本では、作曲家が亡くなった年の翌年から数えて 70年 たつと、その曲は版権切れになります。数え方には、ひとつだけコツがあります。

  • 数えるのは、亡くなった日ではなく、亡くなった年です。
  • 1月でも12月でも、その年の12月31日を起点にします。

たとえば1953年に亡くなった作曲家なら、2024年の時点で70年がたち、自由に使えます。バッハやモーツァルトのように、はるか昔の作曲家の曲は、もちろんすべて版権切れです。

日本だけの落とし穴:戦時加算

ここで、日本で歌う人がつまずきやすい点があります。「戦時加算(せんじかさん)」です。

第二次世界大戦で日本と戦った国の作曲家は、通常の70年に 約10年 が足されます。フランスやイギリスなどの曲が当てはまります。

  • 「もう70年たったはず」と思っても、まだ使えないことがあります。
  • 判断に迷ったら、その曲は使わず、別の安全な曲を選びましょう。

もうひとつ、編曲(へんきょく)にも気をつけてください。もとの曲が古くても、最近アレンジし直した版には、編曲者の権利が新しく残ります。古い時代に出版された版を選べば、この心配はほぼ消えます。

楽譜が無料で手に入る三つの場所

ネット上に、版権切れの楽譜を集めた図書館があります。どれも無料で、ファイルをダウンロードできます。

  • IMSLP:世界最大の無料楽譜サイトです。歌曲やオペラのアリアを探すならここが中心になります。
  • CPDL:合唱(がっしょう)の曲に強いサイトです。みんなで歌う曲をそろえたいときに便利です。
  • Mutopia:自由に使える楽譜を集めた、補助に使えるもう一つの場所です。

どれも英語のサイトですが、曲名や作曲家のつづりを入れれば検索できます。

渡す前に確かめる三つのこと

楽譜を見つけたら、すぐ使う前に次の点を確かめてください。

  1. 作曲家の没年(ぼつねん):亡くなった年を調べ、翌年から70年たっているか数えます。
  2. 編曲者の有無:アレンジした人がいれば、その人の没年も同じように確かめます。
  3. 国の表示:サイトには国ごとの可否マークが出ます。日本で使える表示か、戦時加算の対象国でないかを見ます。

要するに、もとの曲と編曲の両方が古いかどうか を見れば判断できます。

教える場面でどう生きるか

版権切れの曲にくわしいと、指導する立場になったとき強みになります。生徒に配る楽譜を、費用をかけずに用意できるからです。

  • 練習曲として、無料の楽譜を人数分そろえる。
  • 生徒の声域に合わせて、調(キー)を選んで渡す。

版権切れの歌曲には、高い調・低い調といった複数の版がそろっていることが多くあります。高い声が出しやすい人もいれば、低めが心地よい人もいます。声に合う調を選ぶと、生徒は無理なく歌えます。

どんな曲でも、土台になるのは発声(はっせい)です。曲が変わっても、息の流れとゆるんだ声の出し方は変わりません。生徒がのどに力を入れすぎていたら、「息にのせて、楽に出そう」と声をかけてください。

もし生徒が、声がかれたまま治らない、のどの痛みが続くと言ったら、無理に歌わせないでください。耳鼻いんこう科など専門の医療機関へ相談するよう、やさしくすすめましょう。

楽譜を選ぶ目も、声を教える人の大切な道具です。今は自分のために曲を集めている人も、その積み重ねが、いつか誰かに教える力に変わっていきます。

声を教える仕事が自分に合いそうか。少し気になった方は、無料の適性診断で、その手がかりを確かめてみてください。

よくある質問

版権切れの楽譜は、本当に無料で使ってよいのですか。
はい。作曲家が亡くなった年の翌年から70年たった曲なら、自由に使えます。ただし最近のアレンジには編曲者の権利が残るため、古い時代に出版された版を選ぶと安心です。
戦時加算とは何ですか。気をつける必要はありますか。
戦争で日本と戦った国の作曲家に、通常の70年へ約10年が足される仕組みです。フランスやイギリスなどの曲は、70年たっても使えないことがあります。迷うときは無理に使わず、別の安全な曲を選びましょう。
どのサイトから探すとよいですか。
歌曲やアリアなら IMSLP、合唱なら CPDL が探しやすいです。どちらも無料で、曲名や作曲家のつづりで検索できます。

参考にした一次情報

  • IMSLP(Petrucci Music Library・無料楽譜ライブラリ)
  • CPDL(Choral Public Domain Library・合唱版権切れ楽譜)
  • Mutopia Project(自由に使える楽譜アーカイブ)