クラシック声楽で生きる道

解説カンタ監修: 上野目 泰之4

クラシック声楽を土台に広がる多様な仕事と生き方を、版権切れの名曲とともにやさしく紹介します。

クラシック声楽の道はひとつではなく、すべての土台は「発声」です

クラシック声楽を学んだ人の道は、ひとつではありません。歌う人、伴奏に寄りそう人、合唱を導く人、そして人に教える人。形はさまざまです。でも、どの道にも共通する土台があります。それは発声です。声をどう響かせ、どう息で支えるか。この基礎があるほど、進める道は広がります。

ここで大切なことを先に伝えます。この記事は「これを学べば〇〇になれる」とは言いません。道のりや向き不向きは、人それぞれだからです。ここでは「どんな道があるか」を、やさしく並べるだけにします。

声を生かす、いろいろな道

クラシック声楽の学びは、歌の舞台だけにつながるわけではありません。声を使う場は、思ったより広いです。

  • 歌い手: 独唱会や合唱、宗教曲のソロなど。
  • 合唱の指導: 学校や地域の合唱団をまとめる役。
  • 音楽の進行役: 演奏会の司会や、式での朗読。
  • 声を教える人: 子どもや大人に、声の出し方を伝える役。

どの場でも、息の支えと、なめらかな発声が役に立ちます。土台が同じだから、ひとつの道で身についた力は、ほかの道でも生きます。

版権切れの名曲から始めよう

「何を歌えばいいの」と迷ったら、まず版権切れの曲がおすすめです。版権切れとは、作曲者が亡くなって長い年月がたち、だれでも自由に使える楽譜のことです。お金の心配なく、楽譜を手に入れて練習できます。

声楽でよく親しまれる、版権切れの曲を挙げます。

  • シューベルト「野ばら」「子守歌」: やさしい旋律で、初めの一歩に向きます。
  • フォーレ「夢のあとに」: フランス語のなめらかな響きを学べます。
  • ブラームス「子守歌」: 世界中で歌われる、おだやかな名曲。
  • 滝廉太郎「お正月」、成田為三「浜辺の歌」、草川信「夕焼小焼」: 日本語の童謡で、ことばと旋律のつながりを感じられます。

楽譜は、CPDLやIMSLPといった、版権切れの楽譜を集めた場所で見つかります。まずは短い曲を、ていねいに歌ってみてください。

声と体を、すこやかに保つ

どの道を選ぶにせよ、声は大切な道具です。むりに大きな声を出したり、高い声を力で出したりすると、のどに負担がかかります。

すこやかに続けるコツは、次のとおりです。

  • 水をこまめに飲む。
  • 長く使った日は、声を休ませる。
  • のどをしめつけず、やさしい息で歌う。

もし、声がかれて治らないときや、のどに痛みや強い不調があるときは、無理をせず、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。

教える道もある

声を学んだ人の中には、教える側に回る人もいます。自分が身につけた発声を、次の人に伝える道です。

教えるとき、いちばん役に立つのは「言いかえる力」です。たとえば、ただ「もっと響かせて」と言うのではなく、こう伝えます。

  • 「あくびのように、のどの奥を広げてみよう」
  • 「息を、糸のように細く長く流そう」

なぜそうするのか、理由とたとえ話で語れると、生徒は楽に声を出せます。版権切れの曲は、教材としても便利です。だれでも楽譜を配れるので、生徒と一緒に練習しやすいのです。

教えることは、人の成長に寄りそう仕事です。歌う道とはちがう喜びが、そこにあります。

まず、向いている道を確かめてみよう

クラシック声楽の道は、ひとつではありません。歌う道、導く道、教える道。どれも土台は発声です。あなたに合う形は、きっとあります。

自分はどの道に向いているのか。気になった方は、適性診断で確かめてみてください。気軽な質問に答えるだけで、あなたの強みのヒントが見つかります。独りで悩まず、まず一歩、のぞいてみてください。

よくある質問

クラシック声楽を学ぶと、歌手になれますか?
なれるかどうかは人それぞれで、約束はできません。ただ、学んで身につく発声の土台は、歌う道だけでなく、合唱を導く道や、人に教える道など、声を使う多くの場で役に立ちます。まずは自分に合う形を探すことが大切です。
版権切れの曲とは何ですか?どこで楽譜を手に入れられますか?
作曲者が亡くなって長い年月がたち、だれでも自由に使える楽譜のことです。シューベルトやフォーレ、滝廉太郎などの曲があります。CPDLやIMSLPという、版権切れの楽譜を集めた場所で無料で手に入ります。
歌うのが得意でないと、声を教える仕事はできませんか?
教える力と、自分が上手に歌う力は、別のものです。大切なのは、声のしくみを理由とともに、やさしく言いかえて伝える力です。発声の土台を学べば、教える道に進む人もいます。向き不向きが気になる方は、適性診断で確かめてみてください。

参考にした一次情報

  • CPDL(Choral Public Domainライブラリ・版権切れ声楽譜)
  • IMSLP(ペトルッチ楽譜ライブラリ・版権切れ楽譜)
  • MUSEION 版権切れ声楽データベース(vocal_works)