歌曲(アートソング)の世界を知る

解説カンタ監修: 上野目 泰之3

歌曲(アートソング)は、詩とピアノと声だけで世界をひらく音楽です。版権切れの名曲から、はじめの一曲の選び方と仕上げの手順までを、歌う人にも教える人にも役立つ形でまとめます。

歌曲は、たった二人で詩の世界をひらく音楽です

歌曲(アートソング)は、一編の詩に音楽をつけ、歌い手とピアノの二人で届ける曲です。大きな舞台そうちはいりません。だからこそ、ことば一つひとつの色あいが、声の表現で決まります。歌う人にとっても教える人にとっても、その土台になるのは発声です。

なぜ学びはじめに歌曲が向くのか

理由は三つあります。

  • 曲が短いので、最後まで通してあつかえます。
  • 詩が物語になっていて、表現のまとがしぼりやすいです。
  • 版権切れの名曲(だれでも自由に使える曲)が多く、楽譜を無料で手に入れられます。

オペラの一曲は十分をこえることもありますが、歌曲は二〜三分が中心です。一曲をやりきった気持ちが、次の一歩につながります。

はじめの一曲は、こう選びます

迷ったら、次の順でしぼってください。

  1. 母国語から:日本歌曲なら、ことばと音のつながりがすぐにつかめます。滝廉太郎「花」、成田為三「浜辺の歌」がよく歌われます。
  2. 声の高さがせまい曲から:高い音が続く曲はあとまわしに。シューベルト「野ばら」は上下のはばがおだやかです。
  3. 流れのなめらかな曲へ:フォーレ「夢のあとに」で、息を長くつなぐ感覚を育てます。

楽譜は、版権切れの作品を集めた無料サイトでさがせます。新しい曲は権利が残ることもあるため、使う前に作った人のなくなった年をたしかめると安心です。

一曲を仕上げる三つの手順

声をはりあげる前に、ことばと向き合います。

  1. 詩を読み上げる:意味とくぎりを、声に出して体でたしかめます。
  2. メロディーだけ口ずさむ:音の流れを先におぼえます。
  3. ことばと音を重ねる:母音をのばすところで、声をたっぷり響かせます。

のどに痛みや、声がかすれて戻らない不調があれば、続けずに休んでください。長引くときは耳鼻いんこう科など専門の医療機関へ相談しましょう。

教える道では、別の力が要ります

歌曲を深く知ると、人に伝える仕事にもつながります。そこでは歌う力とは別に、次の力が生きます。

  • 詩の背景を、やさしいことばで語る力
  • 生徒の声に合う一曲を、引き出しから選ぶ力
  • ことばのにごりを、ていねいに整える力

ただし、学べばすぐ教えられる、というものではありません。場数を重ねて少しずつ育てる力です。

歌う道も教える道も、入り口は同じ発声です。歌曲は、その基本を「ことば」と結びつけてみがける場所だといえます。詩を声にのせる手応えに心がはずむなら、その感覚をたしかめる近道があります。まずは適性診断で、自分はどの声の道を歩みたいのかをのぞいてみてください。

よくある質問

歌曲とオペラは何がちがいますか?
歌曲は詩を歌にした、ひとりで歌う短めの曲です。ピアノと声だけで世界を伝え、二〜三分の曲が中心です。オペラは大きな舞台で物語を演じながら歌い、一曲が十分をこえることもあります。歌曲のほうが、ことばを細かく味わう音楽です。
はじめの一曲はどう選べばよいですか?
まず母国語の曲から入ると、ことばと音をつなげやすいです。滝廉太郎「花」や成田為三「浜辺の歌」が定番です。次に声の高さのはばがせまい曲を選び、慣れてきたら流れのなめらかな曲へ進むと、無理がありません。
歌曲を学べば歌の先生になれますか?
歌曲を学ぶことは、教える道へのよい一歩になります。ただし、学べばすぐ先生になれると決まるわけではありません。詩の背景を語る力や、生徒の声に合う曲を選ぶ力を、場数を重ねて少しずつ育てていく必要があります。

参考にした一次情報

  • IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト・パブリックドメイン楽譜)
  • CPDL(Choral Public Domain Library)
  • MUSEION vocal_works データベース(版権切れ声楽レパートリー)