水分と声の関係

解説ケン監修: 上野目 泰之3

水分が声帯をうるおすと軽い力で声が出るしくみと、毎日のかしこい飲み方、そして生徒への伝え方をやさしく解説します。

結論:水を十分にとると、声帯はうるおって、軽い力でラクに声が出ます。乾くと声がかすれやすくなります。

声は、のどの奥にある「声帯(せいたい)」という、うすいひだが、ふるえて生まれます。このひだの表面が、いつもしっとりしていることが、よい声のもとになります。

水でうるおうと、なぜ声がラクになるの

声帯がうるおっていると、ふるえ始めるのに必要な「息の力」が、少なくてすみます。これを研究の世界では「発声のしきい値」と呼びます。

  • うるおっている声帯:軽い息で、すっと声が出る
  • 乾いた声帯:強い息がいるので、のどに負担がかかる

ある実験では、体の水分が足りないと、声帯のふるえの効率が、三割ほど落ちたと報告されています。つまり、水分は「のどの油」のような働きをするのです。

水分には二つの種類がある

声のうるおいには、二つの道すじがあります。両方を、組み合わせて使うのがコツです。

  • 体の中からのうるおい:水を飲んで、体ぜんたいの水分をふやす方法です。じわじわ効きますが、土台になります。
  • 表面からのうるおい:湯気を吸ったり、加湿器を使ったりして、ひだの表面を直接しめらせる方法です。すぐ効きますが、効き目は短めです。

大事なことが一つあります。のどに水をスプレーしても、その水は声帯までは届きません。ですから、こまめに「飲む」ことが基本になります。

飲み方のコツ

一気にがぶ飲みするより、少しずつ何回も飲むほうが、声帯にはやさしいです。

  • 一日に一・五〜二リットルくらいを目安にする
  • 冷たい水より、常温か、ぬるめの白湯(さゆ)が、のどにやさしい
  • 朝おきたら、まずコップ一杯
  • おしっこの色が、うすい黄色なら、水分は足りているサイン

ひとつ注意があります。コーヒー・お茶・お酒は、体の水分を外に出しやすくします。飲んだら、その分、水を足してあげましょう。

教えるときに役立つこと

生徒に「水を飲んで」とだけ言っても、なかなか続きません。理由とタイミングを、セットで伝えるのがコツです。

  • 理由を見せる:「うるおうと、軽い息で声が出るよ」と、しくみで説明すると納得しやすいです。
  • 練習前を習慣に:レッスンの前に、コップ一杯を一緒に飲む流れを作ると、自然に身につきます。
  • がぶ飲みを止める:直前に大量に飲むと、トイレが近くなります。前もって、少しずつをすすめましょう。
  • 声がかれた日:水分・休み・声の使い方を、一緒に見直すきっかけにします。

ただし、声がかすれたまま、なかなか治らないときや、強い痛みがあるときは、別の原因も考えられます。そのときは無理をさせず、耳鼻いんこう科などの専門の機関へ、相談するようにすすめてください。

水と声の話は、生徒に伝えやすく、すぐ役に立つテーマです。あなたが「教える人」に向いているか、まずは適性診断で確かめてみてください。きっと、あたらしい気づきがありますよ。

よくある質問

一日にどれくらい水を飲めばいいですか。
目安は一・五〜二リットルくらいです。一気に飲まず、少しずつ何回も飲むのがコツです。おしっこの色がうすい黄色なら、水分は足りているサインです。
のどにスプレーすれば、声帯はうるおいますか。
スプレーの水は声帯までは届きにくいです。表面をうるおすなら湯気を吸う方法が役立ちます。土台はやはり、こまめに水を飲むことです。
コーヒーやお酒は飲んではいけませんか。
だめではありません。ただ、これらは体の水分を外に出しやすくします。飲んだら、その分の水を足してあげると、のどのうるおいを保ちやすくなります。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(声のケア(水分)の章)