息と声の関係|なぜ呼吸が発声の土台なのか

解説ケン監修: 上野目 泰之4

声は息でできているからこそ、呼吸が発声の土台になる理由を、横隔膜や「支え」のしくみとともにやさしく説明します。

結論:声は息でできています。だから呼吸が、すべての発声の土台になります。

歌う声も話す声も、もとはのどを通る息です。息がのどの中の声帯(声を作るひだ)をふるわせて、はじめて音になります。だから、よい声を出したいなら、まず息の使い方から整えます。

声が生まれるしくみ

声が出るまでの流れは、とてもシンプルです。

  • 息を吸って、肺に空気をためる
  • その空気をはき出す
  • はいた息が声帯をふるわせる
  • ふるえが音、つまり声になる

このとき大事なのが、息の「強さ」と「量」です。息が弱すぎると、声はかすれて細くなります。息が強すぎると、のどに力が入り、声がつまります。ちょうどよい息が、楽でよく通る声を作ります

息を送り出す主役は「横隔膜」

呼吸の中心ではたらく筋肉を、**横隔膜(おうかくまく)**と言います。胸とおなかの間にある、ドームのような形の筋肉です。

横隔膜が下がると、肺に空気が入ります。横隔膜がもどると、空気がはき出されます。ふだんの呼吸でも、吸う息の七割から八割は、この横隔膜が作っています。

歌うときは、この動きを意識して使います。おなかがふくらむように深く吸う方法を、**腹式呼吸(ふくしきこきゅう)**と呼びます。手をおなかに置いて、吸うとふくらむのを確かめると、感覚がつかみやすくなります。

やってはいけない呼吸もある

逆に、声に向かない呼吸もあります。肩を上げて、胸の上だけで浅く吸う呼吸です。これを高位呼吸(こういこきゅう)と言います。

この吸い方だと、入る息が少なく、のどに力が入りやすくなります。きんちょうしたときに出やすい呼吸でもあります。声を出す前に肩が上がっていないか、鏡で見るとよく分かります。

プロが使う「支え」という考え方

上手な歌い手は、はく息をゆっくり一定に保ちます。この技術を支え、イタリア語でアッポッジョと呼びます。

支えとは、おなかをぎゅっと固めることではありません。吸ったときに広がった体を、声の最後までやさしく保つ感覚です。両手をわき腹に当てて、吸うと横に広がる。その広がりをキープしたまま声を出す。これが支えの第一歩です。支えが安定すると、長いフレーズも高い音も、のどに無理なく出せます。

教えるときに役立つこと

教える側は、「のどをがんばる」から「息で運ぶ」へ意識を移してあげると効果的です。

  • まず仰向け(あおむけ)で吸ってもらう。重力で自然に腹式呼吸になり、感覚が分かりやすい
  • 手をおなかやわき腹に当ててもらい、「広がり」を自分でさわって確認させる
  • 「もっと強く」ではなく「もっと長く、なめらかに」と声をかける。押す力ではなく、ささえる持続を育てる
  • 肩が上がる人には、息より先に肩の力をぬく練習から入る

言葉だけより、手で触る・鏡で見るといった体の手がかりを使うと、学ぶ人の理解が一気に進みます。

なお、声を出すと痛みが出る、息が続かず苦しいなど、強い不調があるときは、無理せず耳鼻咽喉科などの専門機関へ相談してください。

声を教える仕事に向いているかどうか、まずは気軽な適性診断で確かめてみてください。あなたの「教える力」のヒントが見つかります。

よくある質問

腹式呼吸と胸式呼吸、どちらがよいのですか?
歌や発声では、横隔膜を使う腹式呼吸が基本です。胸の上だけで浅く吸う呼吸は、のどに力が入りやすくなります。ただし上達すると、おなかと肋骨を組み合わせた呼吸も使います。まずは深くゆったり吸う感覚を覚えるところから始めてください。
「支え」がうまくできません。コツはありますか?
支えは、おなかを固めることではありません。吸ったときに広がった体を、声の最後までやさしく保つ感覚です。両手をわき腹に当てて、吸うと横に広がるのを確かめ、その広がりをキープしたまま声を出すと、つかみやすくなります。
呼吸の練習をすると、のどや胸が痛くなります。大丈夫ですか?
練習は本来、楽になっていくものです。痛みが出たり、息が続かず苦しいときは、力みすぎのサインかもしれません。無理は禁物です。強い痛みや不調が続く場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科などの専門機関へ相談してください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(呼吸と発声の章)