生徒の体や声を観察する力

解説ケン監修: 上野目 泰之3

生徒の体や声をよく見て聞く力は、練習を通して誰でも育てられます。観察の手順と教える側の使い方をやさしく紹介します。

結論

生徒の体や声を見て聞く力は、生まれつきではなく、毎日の練習で育てられます。「気づく」を分けて積み重ねるのがコツです。

観察とは「分けて見る」こと

観察と聞くと、特別な才能のように思えます。でも本当は、見るものを小さく分けるだけです。

声を出す人の体は、いくつかの場所が同時に動きます。一度に全部を見ようとすると、何も残りません。だから「今日は肩だけ」と決めて見ます。

  • 肩や首に力が入っていないか
  • 息を吸うとき、お腹やわき腹が広がるか
  • あごや舌が固まっていないか
  • 立ち方が左右でかたよっていないか

一つずつ見ると、変化に気づけます。これがすべての土台です。

耳は「くらべて聞く」と育つ

声を聞く力も、同じように練習で伸びます。大事なのは、良い悪いを決めることではありません。前とくらべて、どう変わったかに気づくことです。

たとえば、同じ言葉を二回歌ってもらいます。一回目と二回目で、息の音や声のふるえがちがうかを聞きます。くらべる相手があると、耳ははっきり働きます。

最初は録音を使うと安心です。その場では流れて消える音も、聞き直すと気づけます。耳は、回数を重ねるほど細かくなります。

体の話は、決めつけない

体を見るときは、医者のような判断はしません。「ここが悪い」と言い切らないことが大切です。

私たちにできるのは、「いつもより息が浅いみたいですね」と、見えたことを伝えることだけです。原因を決めるのは別の話です。

声がかすれる、のどが痛い、息が苦しい。こうした強い不調が続くときは、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談するよう、やさしくすすめてください。これは安全のための大事な線引きです。

観察を言葉にして返す

見て聞いたことは、相手に伝えてはじめて役に立ちます。心の中だけにためないことです。

伝え方は、短く・やさしく。「肩が下がって、息がたくさん入りましたね」のように、見えた事実をそのまま返します。良し悪しの点数より、変化の事実のほうが、相手は受け取りやすいです。

教えるときに役立つこと

この観察する力は、人に教える道でとくに生きます。

教える人は、相手より一歩先に気づく役です。生徒が自分で気づけないことを、代わりに見つけて言葉にします。

  • 「今、声がよく出たのはなぜか」を一緒にふり返る
  • できた瞬間を見のがさず、すぐ伝える
  • できない理由を責めず、次の小さな一歩を示す

観察は、相手を直す道具ではありません。相手が自分で気づく手伝いをする道具です。一人で悩まず、見たことを分け合う。それが教える土台になります。

声を仕事にする道は、歌う人だけではありません。見て、聞いて、伝えることが好きな人には、教える道も開かれています。

最後に

向き不向きが気になる人は、まず気軽に試してみてください。適性診断で確かめてみてください。今の自分の得意な部分が、やさしく見えてきます。

よくある質問

観察する力は、才能がないと身につきませんか。
いいえ。見るものを小さく分けて、一つずつ気づく練習を重ねれば、誰でも育てられます。最初は肩や息など、一か所だけに注目すると始めやすいです。
生徒の声を聞くとき、何に気をつければよいですか。
良い悪いを決めるより、前とくらべて変化に気づくことを大事にしてください。同じ言葉を二回歌ってもらい、ちがいを聞くと、耳がはっきり働きます。録音を聞き直すのもおすすめです。
生徒の体に不調が見えたら、どうすればよいですか。
原因を決めつけず、見えた事実だけをやさしく伝えてください。声がかすれる、のどが痛いなど強い不調が続くときは、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談するようすすめましょう。