まず結論。声の感覚を「言葉」に直せる人は、教える力がぐっと伸びます
なぜなら、生徒が変わるのは「魔法のひと声」ではなく、まねできる言葉を受け取った時だからです。
「もっと響かせて」と言うだけでは、相手は動けません。
「あくびをする時の、のどの広がりを思い出して」と言えば、体が動きます。
この差が、教える力の差になります。
感覚が伝わらないのは、あなたのせいではない
声は、目で見えません。
のどの奥で起きていることは、本人にも相手にも見えにくいのです。
だから、感覚をそのまま渡そうとすると、すれ違います。
「いい感じ」「もっとふわっと」は、人によって受け取り方が変わります。
伝わらないのは、才能がないからではありません。
見えないものを、見える形に置きかえる練習をしていないだけです。
これは生まれつきの力ではなく、あとから学べる技術です。
言葉に直す3つの道具
感覚を言葉にする時は、次の3つを使うと伝わりやすくなります。
- たとえ話にする:「ストローでそっと息を出すように」など、相手が知っている動きに置きかえる
- 体の場所で言う:「おなかの下」「ほおの上」など、触れる場所で伝える
- 数で言う:「いまの半分の息の量で」「3秒のばして」など、数えられる形にする
ひとつの感覚を、3つの言い方で用意してみてください。
人によって、ささる言葉はちがいます。
手持ちの言い方が多いほど、より多くの生徒に届きます。
「自分の感覚」を一度うたがう
うまく歌える人ほど、自分のやり方を言葉にできないことがあります。
体が勝手に動くので、説明する必要がなかったからです。
そこで役に立つのが、自分の声を録って聞き直すことです。
録音を聞くと、「自分がしていること」と「思っていること」のズレに気づけます。
このズレに気づくと、生徒の気持ちも分かります。
「できない人の側」を思い出せるからです。
これが、教える時の優しさにつながります。
言いかえの引き出しは、ひとりでは増えにくい
感覚を言葉に直す力は、独学だと伸ばしにくい部分があります。
自分の言葉が「相手に届いたか」を、ひとりでは確かめにくいからです。
声を学べる場では、こうした言いかえを仲間と試し合えます。
同じ感覚を、ちがう言葉で言い直す練習ができます。
独りで悩まず、人の言いかえを借りられるのが、学ぶ場の良さです。
なお、声を出していて痛みや強い不調が続く時は、無理をしないでください。
その場合は、耳鼻いんこう科などの専門機関に相談してください。
教える道もある:あなたの「分かりやすさ」は武器になる
ここで大事な話をします。
日本では、ボイストレーナーになるための国の資格はありません。
だからこそ、伝え方のうまさが、その人らしさになります。
むずかしい言葉を使える人より、やさしく言いかえられる人のほうが、生徒に好かれます。
あなたが感覚を言葉に直せるなら、それは教える仕事で生きる力です。
教える時は、まず生徒の言葉をまねしてみてください。
相手が「ふわっと」と言うなら、その「ふわっと」を入り口に説明します。
相手の言葉から始めると、ぐっと伝わりやすくなります。
学んできた人だけでなく、これから学ぶ人にも、この道は開いています。
今もっている「分かりやすく話す力」を、声の指導に向けることができます。
さいごに
感覚を言葉にする力は、才能ではなく、学んで身につく技術です。
今日から、ひとつの感覚を3つの言い方で用意する練習を始めてみてください。
自分にこの道が向いているか気になった方は、適性診断で確かめてみてください。
気軽に、いまの自分を知るところから始められます。
よくある質問
- ボイストレーナーになるのに資格はいりますか?
- 日本では、ボイストレーナーになるための国の資格はありません。資格がなくても始められます。大切なのは、声の感覚を相手に伝わる言葉で説明できる力です。学べば、あとから身につけられます。
- 感覚を言葉にするのが苦手です。教える側になれますか?
- なれます。これは生まれつきの才能ではなく、練習で伸ばせる技術です。ひとつの感覚を、たとえ話・体の場所・数の3つで言い直す練習から始めてみてください。むしろ、やさしく言いかえられる人ほど生徒に好かれます。
- 声を出していると、のどが痛くなります。続けて大丈夫ですか?
- 痛みや強い不調が続く時は、無理をしないでください。この記事は教え方の話で、体の診断はできません。気になる時は、耳鼻いんこう科などの専門機関に相談してください。
