結論:歌うときの脱力とは「力を全部抜く」ことではなく、「余分な力だけを手放す」ことです
うまく歌うコツは、体の力を全部ゆるめることではありません。お腹の支えは残し、肩や首やあごの「いらない力」だけを抜くことです。ここを分けて考えると、声はぐっと楽になります。
なぜ余分な力が声をじゃまするの
肩に力が入ると、その力は首や喉まで広がります。すると喉の位置が上がり、声が固くなります。高い音ほど、音が出しにくくなります。
体のつくりから見ても、理由ははっきりしています。
- 肩が上がると、首が縮む
- 首が縮むと、喉が上に引っぱられる
- 喉が上がると、声の通り道がせまくなる
つまり「のどで押し上げて高い音を出そう」とすると、逆に出にくくなります。これは多くの初心者がやりがちな、よくあるクセです。
力みやすい3つの場所
声をじゃまする力は、おもに次の場所にたまります。
- 肩:高い音で、つい上がってしまう
- 首:頭が前に出ると、力が入る
- あご:かみしめると、喉まで固くなる
この3つをゆるめるだけで、声の自由度は大きく変わります。
今日からできる脱力の手順
むずかしい道具はいりません。歌う前に、ゆっくり試してみてください。
- 肩を一度、ぐっと上げてから、ストンと落とす
- 首をゆっくり左右に倒し、横ののびを感じる
- 背骨を、首から順に一つずつ前へ倒していく
- 下まで倒したら、こしから順に積み上げて立ち上がる
- 立ったら、頭が背骨の上にそっと乗る感じを思い出す
この背骨を倒す動きは「ロールダウン」と呼ばれます。背中の力がほどけ、息も深く入ります。立つときは「頭のてっぺんが、天井から軽く引っぱられる」とイメージすると、首が楽になります。
なお、歌うと喉に痛みが出る、声がかすれて戻らない、といった強い不調があるときは、無理をせず専門機関へ相談してください。
教えるときに役立つこと
生徒に「力を抜いて」とだけ言うと、お腹の支えまで抜けてしまうことがあります。だから「どこの力を抜くか」を、場所で具体的に伝えましょう。
- 「肩を下げてみよう」と、場所を一つにしぼる
- 鏡で、肩が上がっていないか一緒に見る
- 高い音で肩が上がる人には、まず低い音で成功体験を作る
言葉だけでなく、ロールダウンのように体で感じてもらうと、伝わりやすくなります。「ゼロにする」ではなく「いらない分だけ手放す」と伝えるのが、安全で分かりやすいコツです。
歌の脱力を教えるのが向いているか気になった方は、適性診断で確かめてみてください。
よくある質問
- 脱力すると声が弱くなりませんか。
- 全部の力を抜くと弱くなります。でも歌の脱力は、お腹の支えは残したまま、肩や首のいらない力だけを抜くことです。支えがあるので、声はむしろ楽に、よく響くようになります。
- 高い音になると、つい肩が上がってしまいます。どうすればいいですか。
- 肩を上げて音を押し上げるクセが原因のことが多いです。まず肩をストンと落とす練習をして、低い音で「肩を下げたまま出せた」という感覚をつかみましょう。そのあと少しずつ音を上げると、肩が上がりにくくなります。
- 歌っていると喉が痛くなります。脱力すれば治りますか。
- 力みが減ると楽になることはあります。ただし痛みや、声がかすれて戻らない強い不調があるときは、自己判断せず、耳鼻咽喉科などの専門機関へ相談してください。無理に練習を続けないことが大切です。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(身体(脱力)の章)

