姿勢が声を変える理由

解説ケン監修: 上野目 泰之4

姿勢で声が変わるのは、吸える息の量とのどの楽さが変わるからです。体の整え方と教え方のコツを、やさしくお伝えします。

姿勢が変わると声が変わるのは、息の通り道とのどの自由が変わるからです。

姿勢は、ただの見た目ではありません。声を出すための「体の準備」です。

立ち方が変わると、息の入る量が変わります。さらに、のどのまわりの力みも変わります。だから声の響きや高さまで変わるのです。

この記事で伝えたいことは、たった1つです。よい姿勢とは「力を入れた姿勢」ではなく、「ムダな力がぬけた姿勢」だということ。

なぜ姿勢で声が変わるのか

体の真ん中には、せぼねが通っています。せぼねは、ゆるやかなS字のカーブをしています。このカーブが、体を軽く支えてくれます。

このS字がくずれると、2つの問題が起きます。

  • 背中を丸めると、むねが縮みます。息の入る場所がせまくなります。
  • 腰を反りすぎると、こしや背中が力みます。その力みが上に伝わり、のどまで固くします。

息を深く吸うには、おなかの近くにある「息を助ける筋肉」が下に動く必要があります。姿勢がくずれると、この筋肉が動きにくくなります。すると、声を支える息が足りなくなります。

声そのものは、のどの奥にある小さなひだ(声帯)がふるえて生まれます。のどが力むと、このひだが自由にふるえません。だから声が固くなります。

体の場所ごとに見てみよう

声に関わる場所は、つながっています。1か所がくずれると、ほかにも伝わります。

  • : 足のうらで床をしっかり感じると、体が安定します。すると、肩や首の力がぬけます。
  • こしの骨(骨盤): 前にも後ろにも傾けず、まっすぐ立てます。これが息を支える土台です。
  • : 肩が上がると、首が縮みます。その力みがのどに伝わります。高い声で肩が上がる人はとても多いです。
  • 首と頭: 頭が前に出ると、のどが上に引っぱられます。声の通り道がせまくなります。

ここで大切な注意があります。練習で痛みや強い不調を感じたら、無理をしないでください。気になるときは、お医者さんなどの専門の窓口に相談してください。

すぐできる「整える」手順

道具はいりません。かべがあればできます。

  1. かべを背にして立ちます。
  2. かかと・おしり・背中・後頭部を、かべにつけます。
  3. その形のまま、1分ほど静かに呼吸します。
  4. ゆっくりかべから離れます。今の「まっすぐな感じ」をおぼえます。

このとき、頭のてっぺんが天井から軽く引っぱられる、と思ってみてください。力で固めるのではありません。ただ「上に長くなる」イメージです。

教えるときに役立つこと

教えるときは、「姿勢を正しなさい」と言わないほうがよいです。多くの人は、その言葉で体を固めてしまうからです。

代わりに、次のように伝えると伝わりやすいです。

  • 「正しい形」ではなく「ムダな力をぬく」を目標にする。
  • 生徒の体を上から下まで、順番に見る。肩・首・こしのつながりを確認する。
  • 鏡やスマホの動画で、本人に自分の姿を見てもらう。言葉より早く気づけます。
  • 高い声で肩が上がる人には、まず肩を下ろす動きから教える。

そして、声の変化を一緒に喜ぶことが大切です。「さっきより楽になったね」という一言が、生徒の自信になります。姿勢は、教える人の観察力がそのまま生きる分野です。

声を教える仕事に向いているかどうか、気になりませんか。あなたの強みや学び方のタイプを、適性診断でやさしく確かめてみてください。

よくある質問

姿勢を直せば、すぐに声はよくなりますか?
少しずつ変わっていきます。よい姿勢になると、息が入りやすくなり、のども楽になります。ただし体がおぼえるには、くり返しの練習が必要です。あせらず続けることが、いちばんの近道です。
背すじはピンと伸ばしたほうがよいですか?
力を入れて固めるのは逆効果です。むしろのどや肩が力んでしまいます。目指すのは、ムダな力がぬけた「楽なまっすぐ」です。頭が上から軽く引っぱられるイメージが役立ちます。
姿勢の練習で、首や腰が痛くなりました。どうすればよいですか?
まず練習をやめて、無理をしないでください。痛みや強い不調があるときは、お医者さんなどの専門の窓口に相談してください。体を痛めない範囲で、楽に立てる形をさがすことが大切です。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(身体(姿勢)の章)