ピッチを安定させるには
ピッチが安定しないのは才能ではなく、「息の支え」と「自分の声を聞く耳」がそろっていないだけ。どちらも練習でのばせる理由と手順を、やさしく解説します。

結論:ピッチを安定させるカギは「息の支え」と「自分の声を聞く耳」の二つです
ピッチとは、声の高さのことです。ピッチが安定しないのは、才能のせいではありません。多くの場合、息の出し方と、自分の声を聞く力(耳)が、まだそろっていないだけです。この二つは、練習でのばせます。順に見ていきましょう。
そもそもピッチは何で決まるのか
声の高さは、のどにある「声帯」というヒダが、1秒間に何回ふるえるかで決まります。ふるえる回数が多いほど、高い声になります。
- ふるえる回数の調整は、とても細かい作業です
- 半音上げるだけでも、ふるえる回数を約6パーセント増やします
- だから、ほんの少しのズレが、音のはずれに聞こえます
理由1:息の支えがゆれると、音もゆれる
ピッチが安定しない一番の原因は、息の圧力のゆれです。声帯は、はき出す息の圧力でふるえています。だから、息がゆれると、声の高さもゆれます。
専門の知識では、息の圧力が1割ゆれるだけで、音の高さは半音の半分ほどズレることがあると言われています。ほんの少しの息のムラが、大きな音のズレになるのです。
息を支える練習の例を挙げます。
- ストローで、ゆっくり長く息をはく
- 一定の強さで「スー」と息を流す
- おなかの底で息を静かに支える感覚をさがす
理由2:自分の声を聞けると、その場で直せる
ピッチを安定させるには、自分の声を正しく聞く力が欠かせません。耳が「目標の音より低い(高い)」と気づくと、脳がのどに指示を出し、声の高さを直します。この「聞いて、直す」流れが速いほど、ピッチは安定します。
ここで知っておきたいことがあります。自分の声は、二つの道で聞こえています。
- 空気を通って、耳から聞こえる声
- ほねを通って、頭の中で聞こえる声
録音した自分の声がいつもと違って聞こえるのは、ほねを通る分が消えるからです。だから録音を聞くと、本当の自分の声に近い形で確かめられます。
理由3:耳は練習でのびる
「音感は生まれつき」と思われがちですが、音と音の高さの差を聞き分ける力は、練習でしっかりのびます。
- ピアノやチューナーの音と、自分の声を合わせる
- 楽譜を見て、ドレミで歌ってみる(ソルフェージュ)
- アプリで、自分のピッチを画面に出して確かめる
毎日少しずつ続けると、耳と声がだんだんつながっていきます。
教えるときに役立つこと
生徒のピッチがはずれるとき、「もっと正確に」と言うだけでは直りません。原因を分けて見ることが大切です。
- 息がゆれていないか(支えの問題)
- 自分の声を聞けているか(耳の問題)
まず録音を一緒に聞くと、生徒は自分のズレに気づきやすくなります。次に、画面で高さが見える道具を使うと、言葉だけより早く伝わります。「下がっている」と指摘するより、「息を最後まで支えよう」と動きで伝えると、生徒は直しやすくなります。
なお、声を出すときに痛みや強い不調があるときは、無理をせず、耳鼻いんこう科などの専門機関へ相談してください。
自分に合うか、確かめてみませんか
ここまで読んで「声を教える仕事が気になる」と思ったら、まずは気軽に適性診断で確かめてみてください。あなたの強みや向いている学び方が、やさしく見えてきます。
よくある質問
- ピッチが安定しないのは生まれつきの才能のせいですか?
- いいえ、多くの場合は才能ではなく、息の支え方と自分の声を聞く力がまだそろっていないだけです。どちらも毎日の練習でのばせます。あせらず続けることが近道です。
- なぜ録音した自分の声は、いつもと違って聞こえるのですか?
- 自分の声は、空気を通って耳に届く分と、ほねを通って頭の中に響く分の二つで聞こえています。録音ではほねを通る分が消えるため、ふだんと違って聞こえます。だから録音は、本当の音を確かめるのに役立ちます。
- まず何から練習すればいいですか?
- 最初は、ストローでゆっくり長く息をはくなど、息を一定に保つ練習がおすすめです。あわせて、ピアノやアプリの音に自分の声を合わせると、耳も育ちます。声を出して痛みや強い不調があるときは、無理をせず専門機関へ相談してください。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(聴覚(ピッチ)の章)
