ロングトーン練習の正しいやり方
声を長くのばすロングトーンは、息を細く一定に流す練習です。ティッシュ1枚分の息という目安や、教える側が見るべき3つのチェックポイントまで、やさしく整理します。

結論:ロングトーンは「息を細く長く流す」練習です
ロングトーンとは、ひとつの音をのばし続ける練習です。声をまっすぐのばす練習、と言いかえてもよいです。
ここで多くの人が勘違いします。大きな声や長い秒数をめざす練習ではありません。ねらいは、息を細いひもみたいに、同じ太さで流し続けることです。
息がぶれなければ、声もぶれません。だから歌でも会話でも、声の土台になります。
なぜ土台になるのか
声は、はく息がのどをふるわせて生まれます。息は、声を運ぶ風のようなものです。
風が強くなったり弱くなったりすると、声はゆれます。逆に風が一定なら、声は落ち着いてのびます。ロングトーンは、この「一定の風」を体に覚えさせる時間です。
音程を保つ力も、声を遠くへ届ける力も、ここから伸びます。地味ですが、効き目の大きい練習です。
やり方:5つの手順と目安
- 姿勢をととのえる — 立っても座ってもよいです。肩を下げ、背すじを軽くのばします。
- 3秒で息をすう — 鼻から、おなかのまわりがふくらむようにすいます。肩を上げないのがコツです。
- 「アー」で出す — むりのない高さ、ふだんの会話くらいの音量で始めます。
- ティッシュ1枚分の息でのばす — 口の前にティッシュをたらし、それがほとんど動かない息の量を保ちます。これが「細く流す」の目安です。
- 苦しくなる前に止める — がまんは禁物です。
秒数の目安は、5秒から始め、2週間で10秒をめどにします。数字は競うものではなく、ゆれずに出せる範囲の確認です。
つまずきやすい3つの場面
- 終わりにかけて声が小さくなる — 息の支えがゆるんでいます。最後の1秒まで同じ量を出す意識を持ちます。
- 声がふるえる — 力が入りすぎです。肩と首の力をぬき、口角だけ軽く上げます。
- 3秒も続かない — 息を一気に使いすぎています。さっきのティッシュの目安に戻します。
うまくいかなくても、あせらないでください。1日3回でも、毎日続けるほうが変わります。
やってはいけないこと
苦しいのに、秒数のために出し続けることです。
長くのばそうとして、のどをしめる人がいます。これは声をいためるもとになります。長さくらべではありません。一定の息を保つ感覚を育てる時間です。
もし、のどの痛みや、声がかれる感じが続くなら、すぐにやめて休んでください。数日たっても治らないときは、耳鼻咽喉科など専門の窓口に相談しましょう。声を守ることが、いつも先です。
教える側のチェックポイント
教えるとき、つい「いま8秒!」と秒数をほめたくなります。これは逆効果です。
秒数でほめると、生徒さんは長さを追い、のどに力を入れます。見る場所は、長さではありません。次の3つです。
- 声のまっすぐさ — 出だしと終わりで音量が変わっていないか。
- のどの力み — あごやのどが固まっていないか。
- 息の音 — 「シュー」というもれる音が混ざっていないか。
録音して、いっしょに聞くのも効きます。自分の声を外から聞くと、本人が変化に気づきます。
そして、しくみを短い言葉で渡します。「おなかで風を一定に送ると、声が落ち着くよ」。理由が腑に落ちた生徒さんは、家でも同じ練習を再現できます。
まとめ
ロングトーンは、細く長い息を保つ力を育てる練習です。秒数ではなく、声のまっすぐさと、のどの楽さを見てください。
声を「出す」側から「教える」側へ。その入り口に立ってみたい方は、適性診断で、指導者としての向き不向きと、いまのあなたに合う学び方をのぞいてみてください。
よくある質問
- ロングトーンは、何秒のばせればいいですか?
- 秒数は目標ではありません。最初は5秒から始め、2週間で10秒をめどにすれば十分です。大切なのは、声をまっすぐ、ゆれずにのばせるかどうかです。むりに長くのばすと、のどをいためるもとになります。
- 息がすぐ切れてしまいます。どうすればいいですか?
- 息を一気に使いすぎているサインです。口の前にティッシュをたらし、それがほとんど動かないくらいの細い息を保つ練習がおすすめです。少ない息で長く使うイメージがつかめます。
- 声がふるえてしまうのは、なぜですか?
- 多くは、肩や首に力が入りすぎているためです。一度ぬいて、口角だけ軽く上げてみてください。痛みやかすれが続くときは練習をやめて休み、治らなければ耳鼻咽喉科などに相談しましょう。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(練習法の章)
