日本語歌唱はなぜ難しい?

解説カンタ監修: 上野目 泰之3

日本語の歌は「のばす音・つまる音・はねる音」が声のながれをじゃまするためむずかしく感じます。しくみと、きれいに歌う3ステップをやさしく説明します。

日本語の歌は「のばす音」と「つまる音」が多く、ことばと声をきれいにつなぐのがむずかしいのです

日本語の歌がむずかしいのには、はっきりした理由があります。母音(あ・い・う・え・お、のばす音のもと)が5つと少なく、ひとつずつをきれいに出す必要があります。さらに「のばす音」と「つまる音」が多く、声をなめらかにつなぐのがむずかしいのです。でも、しくみがわかれば、ひとつずつ練習できます。

なぜむずかしいのか、しくみを見てみよう

歌いやすい言語の代表はイタリア語です。イタリア語はことばのおわりが母音になることがとても多く、声が自然にのびます。

日本語も母音でおわる音が多いので、本当はのびやすい言語です。それなのにむずかしく感じるのは、つぎの3つの音があるからです。

  • のばす音(ちょうおん): 「おかあさん」の「かあ」のように、母音を2はく分のばす音です。
  • つまる音(そくおん): 「きって」の「っ」のように、音を1はく分とめる音です。
  • はねる音(はつおん): 「ほん」の「ん」のように、鼻にぬける音です。

この3つは、ふつうに話すときは気になりません。でも歌になると、声のながれをじゃまします。だから日本語の歌はむずかしく感じるのです。

具体れい:3つの音をどうあつかうか

のばす音は、口の形を最後まで変えないことが大事です。「あー」とのばすとき、とちゅうで舌が動くと音がゆれます。同じ形のまま、しずかにのばしましょう。

つまる音は、のどをしめないことが大事です。「っ」は声をとめる音です。このとき、のどに力を入れてとめる人が多いです。でもそれは声に負担がかかります。かわりに、舌やくちびるの形を一しゅんとめて表します。

はねる音は、長くしすぎないことが大事です。「ん」は鼻にぬける音です。「ん」が長すぎると、まわりの母音まで鼻にぬけて、音がにごります。

手順:きれいに歌うための3ステップ

  1. ゆっくり読む: まず歌詞を、メロディなしでゆっくり声に出します。のばす音・つまる音・はねる音の場所をたしかめます。
  2. 母音だけで歌う: 子音(かしらの音)を取り、母音だけでメロディを歌います。声のながれを先につくります。
  3. 子音をおそく入れる: 子音は、つぎの母音にできるだけ近づけて、おそめに入れます。こうすると母音が長くのび、声がなめらかにつながります。

このやり方は、プロもよく使う「子音をおくらせる」という考え方です。むずかしい曲ほど、この手順が役に立ちます。

教えるときに役立つこと

人に教えるときは、「のどでとめない」を何より先に伝えてください。つまる音やはねる音で、のどに力が入る人はとても多いからです。

伝え方のこつは、声ではなく口の形で説明することです。たとえば「『っ』は声でとめるのではなく、舌でとめる」と言うと伝わりやすいです。

高い音が苦しいときは、母音の形を少しだけ変える方法も教えられます。たとえば高い「ア」を、ほんの少し「オ」に近づけると、声が楽になります。聞いている人には変わったと気づかれません。

もし生徒がのどの痛みや強い不調をうったえたら、無理に続けさせないでください。痛みや強い不調があるときは、医療の専門きかんへの相談をすすめましょう。これは指導者の大切な役わりです。

教えることは、「うまく歌わせる」ことだけではありません。声を守りながら、できることを少しずつ増やす手だすけです。

日本語の歌のむずかしさは、正しい順番で練習すれば、ひとつずつ越えられます。声を教える仕事に向いているか、まずは適性診断で確かめてみてください。きっと、これからの学びの地図になります。

よくある質問

日本語は母音が少ないのに、なぜ歌がむずかしいのですか?
母音は5つと少なく、ひとつずつをきれいに出せます。でも「のばす音」「つまる音」「はねる音」が多く、声をなめらかにつなぐのがむずかしいからです。
「っ」(つまる音)を歌うコツは何ですか?
のどに力を入れてとめないことです。声でとめると負担がかかります。かわりに舌やくちびるの形を一しゅんとめて表すと、声を守れます。
歌っていてのどが痛いときはどうすればよいですか?
無理に続けないでください。痛みや強い不調があるときは、医療の専門きかんへ相談しましょう。指導者は、生徒にもこのことを必ず伝えてください。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(発音(日本語)の章)