聴音トレーニングは「音をまねる」短い練習を毎日少しずつ続けるのが、いちばんの近道です
聴音(ちょうおん)とは、聞こえた音を聞き分けて、楽譜(がくふ)に書き取る練習のことです。むずかしそうですが、始め方はシンプルです。毎日5分から10分でかまいません。「音を聞く」「すぐに同じ音を声に出す」をくり返すだけで、耳は少しずつ育ちます。
聴音とは何かを、やさしく言うと
聴音は、耳を音楽のために鍛(きた)える練習です。声楽用語事典は、聴音を3つの段階で説明しています。
- 単音(たんおん): ひとつの音を聞いて、その高さをあてる
- 和音(わおん): いくつかの音が重なった「ひびき」を聞き分ける
- 旋律(せんりつ): メロディーを聞いて、音の動きを書き取る
最初は単音だけで十分です。やさしい音から順に進めば、だれでも力がつきます。
「音感」は生まれつきではない
「音感がないから無理」と思う人は多いです。でも安心してください。事典がはっきり書いているのは、「相対音感(そうたいおんかん)は練習で大きくのびる」ということです。
相対音感とは、ある音を基準にして「その音より高いか低いか」を聞き取る力です。たとえば「ドより少し高い」「この2つは同じ高さ」と分かる感覚です。プロの音楽家のほとんどが、この力を持っています。その多くは、練習で身につけたものです。
いちばん効く練習は「聞いて、すぐ歌う」
事典が「もっとも効果的」とすすめているのは、とてもかんたんな方法です。
- ピアノやアプリで音をひとつ鳴らす
- その音を、すぐに自分の声でまねる
- 合っているか、もう一度鳴らして確かめる
これをくり返すと、脳の中で「耳」と「声」がつながります。事典はこれを聴覚運動統合(ちょうかくうんどうとうごう)と呼びます。聞いた音と、出した声の「ズレ」をなおす働きです。初めはズレて当たり前です。回数を重ねるほど、ズレは小さくなります。
道具は身近なものでよい
特別な機械はいりません。スマホのアプリで始められます。
- EarMaster や Tenutoなどの聴音アプリ: 音を出して、正解かどうかをその場で教えてくれる
- ピアノアプリ: 基準の音を鳴らすために使う
- 録音アプリ: 自分の声を録(と)って、あとで聞き直す
録音した自分の声が変に聞こえても、心配いりません。それがふつうです。録音は、自分の音を落ち着いて確かめる、よい方法です。
教えるときに役立つこと
教える側になると、生徒の「耳と声のズレ」をどう縮(ちぢ)めるかが大切になります。事典は、2つのフィードバックをすすめています。
- 目で見るフィードバック: 鏡を使い、口や姿勢(しせい)を生徒自身に見せる
- 耳で聞くフィードバック: その場で録音し、すぐに本人と一緒に聞く
この2つを組み合わせると、生徒は自分のズレに気づきやすくなります。また、課題はかならず「やさしい単音」から始めてください。いきなり難しい和音を出すと、自信をなくしがちです。一段ずつ上げるのが、長く続けてもらうコツです。
なお、耳や声の使いすぎで痛みや強い不調があれば、無理をせず専門機関へ相談するよう伝えてください。
まとめと次の一歩
聴音は、毎日少しの「聞いてまねる」練習で、だれでも育てられる力です。早く上達することより、続けることのほうが大切です。今日から5分、好きな音をまねることから始めてみてください。
声を教える仕事に向いているか気になる方は、適性診断で確かめてみてください。自分の強みを知る、やさしいきっかけになります。
よくある質問
- 音感がなくても聴音は身につきますか?
- はい。事典によると、ある音を基準に高さを聞き分ける「相対音感」は、練習で大きくのびます。生まれつきの才能ではなく、毎日の積み重ねで育つ力です。
- 毎日どのくらい練習すればよいですか?
- まずは5分から10分で十分です。長い時間を一度にやるより、短くても毎日続けるほうが効果的です。音を聞いてすぐ声でまねる、を気軽にくり返してください。
- 録音した自分の声が変に聞こえます。やり方が間違っていますか?
- いいえ、それがふつうです。ふだん自分の声は体の中を通っても聞こえるため、録音とは少し違って感じます。録音は自分の音を落ち着いて確かめる、よい練習方法です。
参考にした一次情報
- MUSEION 声楽用語事典(聴覚(聴音)の章)

