聴音トレーニングの始め方

やり方ケン監修: 上野目 泰之4

聴音は「音を聞いてすぐまねる」短い練習を毎日続けるだけで、だれでも少しずつ伸ばせる耳の力です。

聴音トレーニングは「音をまねる」短い練習を毎日少しずつ続けるのが、いちばんの近道です

聴音(ちょうおん)とは、聞こえた音を聞き分けて、楽譜(がくふ)に書き取る練習のことです。むずかしそうですが、始め方はシンプルです。毎日5分から10分でかまいません。「音を聞く」「すぐに同じ音を声に出す」をくり返すだけで、耳は少しずつ育ちます。

聴音とは何かを、やさしく言うと

聴音は、耳を音楽のために鍛(きた)える練習です。声楽用語事典は、聴音を3つの段階で説明しています。

  • 単音(たんおん): ひとつの音を聞いて、その高さをあてる
  • 和音(わおん): いくつかの音が重なった「ひびき」を聞き分ける
  • 旋律(せんりつ): メロディーを聞いて、音の動きを書き取る

最初は単音だけで十分です。やさしい音から順に進めば、だれでも力がつきます。

「音感」は生まれつきではない

「音感がないから無理」と思う人は多いです。でも安心してください。事典がはっきり書いているのは、「相対音感(そうたいおんかん)は練習で大きくのびる」ということです。

相対音感とは、ある音を基準にして「その音より高いか低いか」を聞き取る力です。たとえば「ドより少し高い」「この2つは同じ高さ」と分かる感覚です。プロの音楽家のほとんどが、この力を持っています。その多くは、練習で身につけたものです。

いちばん効く練習は「聞いて、すぐ歌う」

事典が「もっとも効果的」とすすめているのは、とてもかんたんな方法です。

  1. ピアノやアプリで音をひとつ鳴らす
  2. その音を、すぐに自分の声でまねる
  3. 合っているか、もう一度鳴らして確かめる

これをくり返すと、脳の中で「耳」と「声」がつながります。事典はこれを聴覚運動統合(ちょうかくうんどうとうごう)と呼びます。聞いた音と、出した声の「ズレ」をなおす働きです。初めはズレて当たり前です。回数を重ねるほど、ズレは小さくなります。

道具は身近なものでよい

特別な機械はいりません。スマホのアプリで始められます。

  • EarMaster や Tenutoなどの聴音アプリ: 音を出して、正解かどうかをその場で教えてくれる
  • ピアノアプリ: 基準の音を鳴らすために使う
  • 録音アプリ: 自分の声を録(と)って、あとで聞き直す

録音した自分の声が変に聞こえても、心配いりません。それがふつうです。録音は、自分の音を落ち着いて確かめる、よい方法です。

教えるときに役立つこと

教える側になると、生徒の「耳と声のズレ」をどう縮(ちぢ)めるかが大切になります。事典は、2つのフィードバックをすすめています。

  • 目で見るフィードバック: 鏡を使い、口や姿勢(しせい)を生徒自身に見せる
  • 耳で聞くフィードバック: その場で録音し、すぐに本人と一緒に聞く

この2つを組み合わせると、生徒は自分のズレに気づきやすくなります。また、課題はかならず「やさしい単音」から始めてください。いきなり難しい和音を出すと、自信をなくしがちです。一段ずつ上げるのが、長く続けてもらうコツです。

なお、耳や声の使いすぎで痛みや強い不調があれば、無理をせず専門機関へ相談するよう伝えてください。

まとめと次の一歩

聴音は、毎日少しの「聞いてまねる」練習で、だれでも育てられる力です。早く上達することより、続けることのほうが大切です。今日から5分、好きな音をまねることから始めてみてください。

声を教える仕事に向いているか気になる方は、適性診断で確かめてみてください。自分の強みを知る、やさしいきっかけになります。

よくある質問

音感がなくても聴音は身につきますか?
はい。事典によると、ある音を基準に高さを聞き分ける「相対音感」は、練習で大きくのびます。生まれつきの才能ではなく、毎日の積み重ねで育つ力です。
毎日どのくらい練習すればよいですか?
まずは5分から10分で十分です。長い時間を一度にやるより、短くても毎日続けるほうが効果的です。音を聞いてすぐ声でまねる、を気軽にくり返してください。
録音した自分の声が変に聞こえます。やり方が間違っていますか?
いいえ、それがふつうです。ふだん自分の声は体の中を通っても聞こえるため、録音とは少し違って感じます。録音は自分の音を落ち着いて確かめる、よい練習方法です。

参考にした一次情報

  • MUSEION 声楽用語事典(聴覚(聴音)の章)