専門分野にしぼるという戦略

解説リク監修: 上野目 泰之3

「だれにでも」より「この人に」。声の仕事で分野を一つにしぼると、合う生徒さんに見つけてもらいやすくなります。声の現場ならではのしぼり方と、一行で自分の軸を確かめる方法を紹介します。

「だれにでも」は、だれの心にも届きにくい

声を教える仕事は、はばがとても広いです。歌、話し方、人前での発声、子どもからシニアまで、対象も場面もさまざまです。だからこそ「どんな方でも教えます」と書くと、強みがぼやけて伝わりません。

先に分野を一つしぼると、合う生徒さんに見つけてもらいやすくなります。これはお金の増やし方ではなく、見つけてもらうための設計の話です。

しぼると伝わる理由

人は「自分のための先生」をさがしています。

たとえば次の二つを比べてみてください。

  • 「歌が上手くなりたい人へ」
  • 「結婚式の余興で一曲、自信を持って歌いたい人へ」

後者のほうが、心当たりのある人にはまっすぐ刺さります。「だれでも」は印象に残らず、「あなたのため」は記憶にのこるからです。しぼることは、ほかを捨てることではありません。入口を一つ、はっきりさせることです。

声の仕事ならではの、しぼり方の例

しぼる軸はいくつもあります。声の現場でよくあるのは、次のような切り口です。

  • 対象でしぼる — 就活生の面接の声、シニアの発声、子どもの音痴克服
  • 目的でしぼる — 結婚式・カラオケ大会・オーディション対策
  • 声の種類でしぼる — 話す声(スピーチ・朗読)か、歌う声(ポップス・合唱)か
  • 届け方でしぼる — 完全オンライン、平日夜だけ、女性限定の少人数

組み合わせも有効です。「平日夜にオンラインで、社会人のスピーチの声を整える」のように二つ重ねると、輪郭がさらにはっきりします。

一行で言い表してみる

しぼれたか確かめる方法は、簡単です。次の型を一行で埋めてみてください。

  • 「私は〔だれ〕の〔どんな悩み〕を〔どんな方法〕で支える先生です」

例: 「私は人前で声が震える社会人の話し方を、オンラインで支える先生です」。

すらすら埋まれば、軸は定まっています。言葉に詰まるなら、まだ広すぎるサインです。

しぼると、ほかも整う

分野が決まると、ほかのことも連鎖して決まります。

伝える言葉が定まります。だれに向けて書くかが見えるからです。料金も決まります。届けたい相手が具体的だと、ねだんの迷いが減ります。レッスンの組み立ても進みます。次の目標を一緒に描けるからです。

一つしぼるだけで、いくつもの悩みが軽くなります。

こわくなったときの考え方

「しぼると生徒さんが減るのでは」と不安になる人もいます。その気持ちは自然です。

でも、はじめから全員を相手にするのは、かえってむずかしいものです。せまく始めて、評判ができてから広げる。この順番のほうが、足取りは軽くなります。最初の一歩は、せまくていいのです。

なお、声を多く使う仕事です。のどの痛みや声がれが続くときは、無理をせず、耳鼻咽喉科など専門の医療機関に相談してください。

教える場面でも生きる考え方

この「一つにしぼる」発想は、生徒さんを教えるときにも役立ちます。

「いま、いちばん変えたいところはどこですか」と聞いてみてください。一度に全部直そうとすると、生徒さんは苦しくなります。一つにしぼると、前に進む手応えが生まれます。

教える側をめざす人にとっても、これは芯になります。何を伝える先生になりたいか。軸が一つ決まると、教え方にもぶれない背骨ができます。

大切な前提

この記事は「しぼれば必ず稼げる」と約束するものではありません。収入にははばがあり、本人の取り組みや働き方で変わります。

だからこそ、正しい順番で学び、ひとりで抱えこまないことが近道になります。設計の考え方は、順番に学べばだれでも身につきます。

あなたが心から教えたい相手は、どんな人でしょうか。その輪郭を、適性診断でいっしょに描いてみてください。

よくある質問

分野をしぼると、生徒さんが減りませんか?
はじめは少なく感じることもあります。でも「だれにでも」は記憶に残りにくいものです。せまく始めて、評判ができてから広げる順番のほうが、合う人に見つけてもらいやすくなります。
どの分野からしぼればいいですか?
「私は〔だれ〕の〔どんな悩み〕を〔どんな方法〕で支える先生です」という一行を埋めてみてください。すらすら書けるところが、あなたの出発点です。就活生の面接、シニアの発声、結婚式の一曲など、楽しく続けられそうな切り口から選ぶと無理がありません。
あとから分野を変えてもいいですか?
はい、変えられます。最初の一つは、ずっと固定するものではありません。やってみて合わなければ、学びながら少しずつ調整していけば大丈夫です。

参考にした一次情報

  • MUSEION 指導者育成プログラムの運営知見